こけしの生産量全国1位!榛東村から世界へ羽ばたく「卯三郎こけし」

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今井夕華

Photo by市根井直規

インタビュー

群馬がこけしの生産量日本一って、知っていましたか?

渋川伊香保I.C.から車で15分ほど行ったところにある、卯三郎(うさぶろう)こけし本店。ここは、日本で一番こけしをたくさんつくっている工房です。おかっぱ頭のクラシカルなこけしをはじめ、オリジナルのサンタこけしや雛人形のこけし、さらにはムーミン、ミッフィー、ミッキーといったキャラクターこけしも盛りだくさん。世界20ヶ国以上に輸出もしています。

今回は副社長で「3代目 卯三郎」の岡本義弘さんに、卯三郎こけしの歴史から、こけしのつくり方、ライセンス商品販売の経緯などを伺いました。

義弘さん作「ネコのサリー」。ネコをだっこした女の子のこけしで、コロンとしたフォルムが特徴的。可愛いお顔は義弘さんのこだわりポイント。

世界20ヶ国以上で愛される存在に

「卯三郎こけしの創業者である『初代 卯三郎』岡本卯三郎は、私の祖父です。人工石や金属による工芸品づくりを経て、1950年にこけし製造を始めました。観光名所の土産物として、大仏や平和祈念像の横にちょこんと付けた小さなこけしが、卯三郎こけしの原点なんですよ」

初代 卯三郎さんは、当時こけしづくりの世界で主流だった筆の絵付けに加え、彫刻や焼き絵を施した立体感のある表現技法を考案。

木材の研究や、手仕事と機械を組み合わせた量産体制の整備にも熱心に取り組み、全国のこけし工房のなかでも、トップの生産量を誇るまでに成長させました。2009年に満91歳にて永眠するまで生涯現役を貫いたというつわものです。

こけし工房の外観。隣接した建物がこけし美術館になっていて、こけしの販売や絵付け体験もできる。

「昔は前橋インターから伊香保や草津方面に向かうときの定番コースという感じで、大型バスで団体の観光客がうちにしょっちゅう来ていたんですよ。私も夏休みは手伝ったり、子どもながらに忙しくしている様子を見ていたので、家族を助けたいという思いで入社しました」

インテリアとしての可愛さと、伝統工芸の技術力が評判を呼び、2000年頃にはヨーロッパを中心に海外でこけしが売れるようになります。イギリスにはなんと毎月1万個ほど輸出していたとか。

「当時はまだキャラクターこけしをつくっていない時期で、伝統的なものをたくさん輸出していました。つくってもつくっても終わらなくてね。コロナ禍のときもイタリアからどっと注文が来たりして、今では世界20ヶ国以上で販売しています」

初代 卯三郎さんをはじめとした卯三郎こけしの職人たちによる名作も、定番商品として購入可能。海外の方へのお土産にもおすすめ。

創造性を競う「こけしコンクール」

初代 卯三郎さんに師事し、3代目 卯三郎となった義弘さん。手先の器用さとセンスの良さを発揮し、全国のこけし職人が集まる「全国近代こけし展」で文部科学大臣賞を受賞。「全群馬こけしコンクール」では農林水産大臣賞を受賞するなど、毎年のように評価されています。

「こけしをつくる工房が減ってきているなか、少しでも盛り上がったらいいなとみんなで取り組んでいます。出品し続けて、もう30年以上。毎年先に題名だけ提出して、そこから『さあどうしよう』ってつくっていくんですよ」

コンクール出品作には昔ながらのこけしもあれば、胴体に風景が描かれている物語性のあるこけしや、細長くスタイリッシュなこけしもあり多種多様。東北の伝統こけしに対して、群馬の「近代こけし」は創造性が高いのが特徴です。こけしってこんなに自由だったんだ!とびっくりします。

義弘さん作「星月夜」。コロンとしたフォルムと、眠っているかのような安らかな表情が可愛い!「木目の美しさもこけしの魅力の一つ。ぜひ楽しんで欲しい」と義弘さん。

使う木材はすべて群馬県産

材料となる木材はすべて群馬のものを使っている卯三郎こけし。メインの「ミズキ」は白っぽい木材で加工しやすいそう。ほかには、用途に応じて「サクラ」「ケヤキ」「クリ」を使い分けています。

「森から伐採してきたあと卯三郎こけしに運び入れ、表面の皮を剥き、2年ほどかけて自然乾燥。その間に割れてしまった部分や、節の強い部分は避けながら、こけしに加工していきます」

工房内は、予約なしでも見学可能。一つひとつのパーツを手作業で加工している様子をじっくり観察できます。エンジニアだった初代 卯三郎さんが、こけし製造用にカスタムした60年ものの機械がまだ現役で動いていて、黙々と作業する職人さんたちの姿に目を奪われます。

「家族で一緒に働いてはいますが、分業制なので持ち場についたらそれぞれの世界。削っているときはずっと削っていますし、磨いているときはひたすら磨く。そこまでぶつかることはありませんでしたね」

こけしづくりの要となるのが、「木工旋盤」と呼ばれる機械。

「四角い木材の両端を固定し高速回転させながら、刃物を当てて丸く削っていきます。パーツごとに金属の型があり、その型に添うように刃物が動くんです」

頭、胴体、おかっぱ部分、装飾部品など、パーツごとに削り出して塗装し、組み合わせていくという流れ。

色付けは筆を使ったり、木を染料につけて染めたりして行います。

「たとえばおさげ髪のパーツは、パーツ同士がくっつかないよう、クリップに挟んで浮かせながら、ひとつずつ手で塗っていきます」

卯三郎こけしの命ともいえる可愛いお顔と、卯三郎こけし考案の「焼き絵」は、ニフロム線を使った機械で焼き付け、立体的で温かみのある仕上がりになります。

「ひな祭りこけしや、カブトをつけた五月人形のこけしは、お子さまのいるご家庭への贈り物にぴったりです。美しい木目もこけしの魅力の一つなので、ぜひ注目して楽しんでもらいたいですね」

とんがり帽子が可愛いサンタさんのこけしや、マリアとヨセフとキリストの家族を描いたこけしも。世代を問わず、カジュアルに飾れるのがうれしい。

版権会社との出会いで、唯一無二のこけし工房へ

数多くのキャラクターこけしを手掛けている同社。パッケージや店舗でも、堂々と「卯三郎こけし」のロゴを掲げ、独自のブランド力を持ってコラボ商品を展開しているのが印象的です。

「きっかけは、2009年に東京インターナショナル・ギフト・ショーに出展したことでした。そこでライセンス会社の方から『ミッフィーの生誕55周年を記念したこけしをつくって欲しい』と声を掛けてもらったんです」

着物を着たミッフィーのこけしは、キャラクターの世界観ともマッチし大人気に。そこから、ムーミンやドラえもん、サンリオ、ミッキーにスター・ウォーズシリーズなど、次々と公式コラボレーションが広がっていきました。

丸みを帯びた胴体に、ピンと立った小さなお耳が可愛いムーミンのこけし。ムーミン谷の世界観と、木の温かな質感の相性が抜群。

「そのライセンス会社は取り扱っているキャラクターも多く、ディズニー本国の方とも長年仲良くしている会社だったので、非常に上手く進めてくれました。それに、キャラクターとコラボできる立体の伝統工芸品というのが意外に少なくて。そこにハマったのが良かったんだと思います」

大まかなデザインは先方に支給してもらい、こちらでこけしの形に落とし込んでいくという流れ。上手くいく秘訣は、相手の注文を聞きすぎないことだとか。

「やりたいと言われたことをすべて受け入れてしまうと、こけしの形からどんどん遠ざかってしまう場合が多いんです(笑)。たとえば100個の限定商品なのに、新しい型を起こすとなると、刃物代で30万円ほどかかってしまうなんてことも。『それなら、今あるこのパーツを組み合わせるのはどうですか?』とお互いのちょうど良い着地点をご提案して、納得してもらった状態で進めていきます」

ウルトラマンシリーズのキャラクターたちも、手のひらサイズのこけしに変身。

2023年には、若い人や海外の人にももっとこけしを楽しんでもらいたいと、伊香保温泉の石段街に「卯三郎こけし 伊香保 カフェ&ギャラリー」をオープンさせました。

テイクアウトスタイルのカフェを併設した店舗になっていて、一口サイズの「こけしカステラ」が名物。おかっぱこけしの形が可愛く、甘さ控えめで食べ歩きにもおすすめです。

「卯三郎こけし 伊香保 カフェ&ギャラリー」のこけしカステラとりんごオレ。

工房として日本一の生産量を誇り、世界20ヶ国以上へ羽ばたく卯三郎こけし。伝統工芸としての昔ながらの技を守りながら、時代に合わせて柔軟に変化し続けている姿が印象的でした。

インテリアや贈り物にぜひ、卯三郎こけしを選んでみてはいかがでしょうか。群馬県産木材の温かみと、丸みを帯びたフォルム、可愛い表情が、きっと癒しをくれるはずです。

卯三郎こけし 本店
群馬県北群馬郡榛東村長岡1591
0279-54-6766
9:00-16:00 水曜定休
(工房見学、絵付け体験、こけし美術館、販売)

卯三郎こけし 伊香保 カフェ&ギャラリー
群馬県渋川市伊香保町伊香保50-3
伊香保温泉石段街の190段目
9:30-16:30  火曜、水曜定休
(販売、カフェ&ギャラリー)

卯三郎こけし 石段店
群馬県渋川市伊香保町伊香保字香湯乙68
伊香保温泉石段街の166段目
9:30~16:00 水曜定休
(販売、絵付け体験)

https://usaburokokeshi.com/


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