ビールの楽しさ・おいしさを分かち合う。クラフトビアバーBOCCA とビアフェスのお話し

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武井仁美 まちの編集社(株式会社まちごと屋)

Photo by市根井

インタビュー

高崎駅西口から徒歩5分のところにある 「Craft beer bar BOCCA(ボッカ) 」は群馬のクラフトビールをはじめ国内外のさまざまなクラフトビールが味わえる専門店です。店内で常時8種類の樽生クラフトビールを味わえるほか、缶・ビンの商品を販売するボトルショップも併設してさらに多種多様なクラフトビールを紹介しています。

「私がいつでも生ビールを飲みたかったから(笑)。」というビール愛とともにお店を開き、2021年にクラフトビールに特化する形にリニューアルしたことで、より多くのビール好きが集うお店となりました。

近年はビアフェスも主催して群馬のクラフトビールシーンを盛り上げ橋渡しをする、店主の松井麻希さんにお話を伺いました。第5回ビアフェスを5/12(日)に控え、過去最大規模となるフェスの楽しみ方のススメなども教えてもらいました。

音楽講師から飲食業へ転身、2013年に今の形につながる「バール  BOCCA」 を開業しました。当初から生ビールは大手メーカーのものを3種類も繋ぐなど、地方の個人店としては力をいれていました。お店でクラフトビールに特化するのはもう少し後ですが、その魅力にはいち早く触れていたそうです。

「新たに飲食の道へ進む前に勉強をかねて、〈よなよなエール〉で有名な長野のヤッホーブルーイングの販売スタッフをした時のことがとても印象的でした。社員みなさんの自社のビールに対する愛と熱量がすごくて、その溢れ出る気持ちに自然と飲み手のほうも魅了されてファンになっていく。送る側と飲む側がひとつになっていいコミュニテイを作っていて、『好き』が集うって強いなぁと感じました。」

また、和食とクラフトビールのペアリングを提案するお店・ザブン*がBOCCAの近所に当時あり、そこで群馬のクラフトビールの先駆け的存在の四万温泉エールのおいしさと出会ったことも、大きな影響となったそうです。BOCCAでも徐々にクラフトビールの取り扱いを増やしていきました。

*料理家・堀澤宏之氏による、食中酒としてクラフトビールと和食を楽しむことをコンセプトにしたお店。途中から「シンキチ醸造所」を立ち上げ自社ビールの提供も開始。ザブンは2022年に閉店したが、醸造所併設のお店で飲むことができる。

四万温泉エールとシンキチ醸造所のビールは
BOCCAでは常に繋がっている

現在のお店の形、「Craft beer bar BOCCA」 になったのは2021年。コロナ禍による飲食店を取り巻く状況の変化に加え、それまで一緒にやってきたスタッフがお店を離れ麻希さん一人でお店を営むことになり、大きな方向転換が必要となったことがきっかけでした。

「一人で私らしくBOCCAを続けていく形を模索して、これまで好きで色々と広げてきたクラフトビールにきちんと特化したいと考えました。もっとたくさんの種類を紹介してクラフトビールのおいしさを知ってもらう機会を増やしたかったんです。」

丁寧なコンディション管理が求められるクラフトビール
ずらりタップが取り付けられた壁の裏には特注の冷蔵設備

コロナ禍で飲食業全体が厳しい中での大きな設備投資を伴う決断、不安はなかったのでしょうか?

「じっと待つよりは、攻める方が性に合っているというか。あの時は、新しいことや前に進むことに対してお金を借りやすい状況でしたよね。地元のしののめ信金さんが、群馬のクラフトビールが常に飲めて魅力を発信する場所、ということに意義を感じてサポートしてくれたおかげもありました。ビアバー設備のプロからは、高崎の商圏規模でのフレッシュローテーションには8タップくらいが良いというアドバイスだったんですけど、本当は12タップにしたいくらい前のめりで、不安はありませんでした(笑)。」

ある日のBOCCAの生ビールのリストです。群馬のクラフトビールはシンキチ醸造所と四万温泉エールに加え、片品ブリューイングもオンタップ。ほかにも、三重、東京、福島、スコットランドと各地の醸造所から届いたビールが繋がっていました。各ブルワリーとも個性的で想いも大きいので、ビールにまつわるストーリーも尽きませんが、BOCCAのタップリストでは情報が溢れすぎないよう気を配っているとのこと。ビールとの新たな出会いのきっかけを損なわない、飲む人のセレクトの幅を狭めないような伝え方を日々模索しているそうです。クラフトビールのことに詳しくない人でも、その日の気分や好みを聞いておすすめしてくれます。

また、BOCCAではいわゆるクラフトビールではない、大手メーカーのビール「ピルスナーウルケル」も常時樽生で提供しています。

「高崎の姉妹都市のチェコ・プルゼニ市で作られているビールでもあり、日本のビールがお手本にした元祖ピルスナー*でもあるんです。クラフトビールかそうでないかをあまり区切りたくないという気持ちもあります。クラフトビールに興味を持ってもらうと、それまで飲んでいたビールが一旦面白くなく感じられて敬遠されてしまうこともあるんです。でも、いわゆる“普通”と思われがちなピルスナーもちゃんとおいしくて好きなので、大切にしてます。」

*ラガー酵母を使ったビアスタイルですっきりとシャープな味わいが特徴。一方、多くのクラフトビールはエール酵母で作られ、豊かな香りと深い味わいが特徴。

グラウラー(炭酸が入れられる水筒)などに入れて
計り売りテイクアウトも可

クラフトビアバーとしての改装と同時に、酒類販売免許も取得して店舗の一角にクラフトビールを販売する酒屋「Bottle shop BOCCA」も併設しました。缶や瓶のクラフトビールの持ち帰り販売や、樽生ビールの計り売りができるようになったことで、よりたくさんの種類のクラフトビールの紹介と、家飲みや様々なシーンでクラフトビールを楽しめる機会を届けています。

ボトルショップにも本当にたくさんのビールが並んでいるので迷ってしまいますが…

「意外とハズレなしでおすすめな選び方は『ジャケ買い』なんです。商品名やボトルのラベルデザインって、作り手の伝えたいことや世界観が真っ先に表現されているところなので、その感性が自分と合うものは中身もしっくりくることが多いですよ。」

90年代の地ビールブームとその後の低迷を経て、2010年代後半から「味」をより意識したクラフトビールが再び注目され、各地で醸造所が加速度的に増え盛り上がっています。BOCCAとしてのセレクトにはどんなことを意識しているのでしょうか?

「今は新しい醸造所が日本各地で月に10件以上オープンすることもあるので、無理に情報を網羅しようとはしてないですね。私が実際にブルワリーに伺う機会も限界があるのですが、ありがたいことにお店のお客さんがいち早く行ってきて色々と教えてくれて。『おいしかったからBOCCAでぜひ樽生で飲みたい!』って熱烈にプレゼンしてくれたりするんです(笑)。顔見知りでもそうでなくても、お店に来てくれるお客さんみんなでこのおいしさを分かち合いたいっていう、クラフトビールファンの素敵なところだと思います。」

お店のコンセプト刷新に合わせ客席もリニューアル。クラフトビールはひとり飲みを楽しむ人も多いので、カウンター席を拡げました。本を片手に静かに味わう人もいたり、ひとり飲み同士で自然と会話が弾んでいたりと、思い思いによい時間を過ごしています。群馬のクラフトビールを飲みたい、と出張のついでや観光で訪れてくれる人も増えたそうです。

フードメニューも、ビールに合うものをひとり飲みにあわせた提供量に刷新しました。特にポテトサラダは麻希さんがいつも新たなアレンジに挑戦しているメニューで、常連さんも注目しています。この日のポテトサラダは、しば漬けのピンクと菜の花のシャキシャキ食感がおいしい春らしい一品でした。

麻希さん曰く
「ビールと芋の組み合わせは正義です(笑)。」

いつも頭の片隅でポテサラをどうしようかとアイデアをめぐらせていると言います。好評でたびたび登場するのは、いぶりがっこと酒粕のポテサラ。反響の大きさNo.1はお好み焼き風ポテサラだったそうです。疑いながら食べた人も、あれ?おいしい!と驚くのが面白かったとか。

作り手と会えるビアフェスを開催

2022年からは麻希さんが発起人となって、ブルワリーが直接自慢のビールたちを提供するビアフェスイベント「CRAFT BEER HOUSE」を始めました。開催のきっかけはコロナ禍での度重なる飲食店の休業要請でした。

「小さなブルワリーだと缶や瓶のビールを製造する設備がないところもあるので、私たちのような飲食店に樽で卸し、お店で飲んでもらうことがメインでした。コロナでその飲食店が休業を余儀なくされることで、多くのブルワリーも樽の販路が絶たれてしまい大変な思いをされていました。もしこのまま、私の好きなビールを作ってもらえなくなってしまったら…、うちの店で売ることができなくなってしまったら…と考えて、何かできることをしたいと始めたんです。いい話のようにも聞こえるけど、やっぱりビールを飲みたい自分のためなんです(笑)。」

photo by Ken Okada

第1回は高崎のコミュニティスペースNAKAKONYAの開放的な空間で開催。長かったステイホーム期間を経て多くのクラフトビールファンが集い、おいしさを分かち合う雰囲気を取り戻せたとの声が多く寄せられたそうです。

photo by Ken Okada
第2回と第4回はホテルの大きなレストランを
フェス仕様にして開催

そして来る第5回、2024年5月12日(日)の「CRAFT BEER HOUSE」 は、高崎市役所前広場の城址公園を会場にこれまでの倍以上の規模での開催となります!青空のもと、芝生でリラックスしながら飲むクラフトビールは格別です。

「今までは施設をお借りしての開催だったので定員もあり、チケットが完売になるとお断りせざるを得なくて。その分、イベントに興味を持ってくれた人とクラフトビールとの新たな出会いの機会が失われてしまうことは心苦しかったんです。今回は大きな屋外空間での開催が実現したので、入場チケットも事前予約も必要なく、ふらりと自由に来てもらえるようになりました。雰囲気をのぞきにくるだけでもOKですよ。」

参加ブルワリー数も前回から倍に増えました。​​群馬からは、シンキチ醸造所、四万温泉エールファクトリー、片品ブリューイング、OCTONE BREWING、Bryü、コタマブルワリーが参加。そして埼玉から本庄銀座ブルワリー、長野からAJB Co. が参加して、あわせて50種類近いビールが登場します。まだ飲んだことのない新たなおいしさとのたくさんの出会いに期待が膨らみます。

「多種多様なビールとの一期一会をぜひ楽しんで欲しいです!直感で選んでもよし、各ブルワリーさんとお話ししてみて選ぶのもよし。私やスタッフにも気兼ねなく聞いてみてくださいね。」

photo by Ken Okada

CRAFT BEER HOUSE
日時:2024年5月12日(日) 11:00 – 18:00 (売切ご容赦)‬
場所:高崎市役所前広場(高崎城址公園)
   群馬県高崎市高松町33-13
入場:無料 ビール購入時には専用リユースカップ(500円)必要
推奨持ち物:レジャーシート、アウトドアチェアなど
※イスやテーブルの用意はありません 
参加ブルワリー:シンキチ醸造所、四万温泉エールファクトリー、片品ブリューイング、OCTONE BREWING、Bryü、コタマブルワリー、本庄銀座ブルワリー、AJB Co.
その他ドリンク&フード出店:Craft beer bar BOCCA(ゲストクラフトビール)、BAR GLEN KEITH(季節のフルーツカクテルなど)、TAKASAKI WINE SHOP 橋本屋(ナチュラルワイン)、warmth(自家焙煎珈琲)、來來(台湾料理&ハイボール)、PECO家(フード&ボトルビール量り売り)、つのぐむ(フード)、La Piéce(フード)、wanotake-わの竹-(フード)
www.instagram.com/craftbeerhouse.takasaki/

Craft beer bar BOCCA
Bottle shop BOCCA

住所:群馬県高崎市通町90-7 ARCビル1F
TEL:027-386-5260
営業時間:火-金 17:30 – 23:00、土 15:00-23:00、日 15:00-20:00
定休日:月曜 
www.instagram.com/craftbeerbar.bocca/

BOCCAの10周年記念グッズの原画イラスト


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