先日公開した、創業100年・富光堂の心とろける食パンの話。インタビューにお伺いしたあと、せっかくなので絶品食パンサンドをおともに上州一ノ宮駅周辺を散策してみました。日常から少し足を伸ばせば、じわりと心が動く魅力がそこかしこにある、上信電鉄沿線のちいさな旅をお楽しみください。
まずは旅のおともの富光堂サンドから。人気ベスト3は順にピーナッツ、ジャムバターミックス、あんバターミックスと続きます。唯一のおかず系のたまごサンドも気になるし、多彩な組み合わせのなかからどれにしようか、悩ましくも楽しい逡巡をしばし。
注文を受けてから作ってくれるサンドは、ふわふわしっとりの富光堂の食パンのおいしさを余すところなく楽しめる人気の品。午前10時ごろに食パンが店頭に並ぶと、絶えず買い求めるお客さんがやってきて、いつも午後の早い時間には完売します。店先ののぼりが食パン販売中の目印です。
絶品食パンと富光堂100年の物語についてはこちらの記事でお伝えしていますので、あわせてぜひお読みください。
それでは、上州一ノ宮駅周辺を巡るちいさな旅に出発しましょう。まずは富光堂からほど近い一ノ宮の超名所・貫前神社方面に向かい始めました。神社の石段をひたすら登ると、鳥居をくぐった左手に公園を発見。早速、絶好の食パンサンドスポットではありませんか!
ベンチやあずまや、地元の方が大切に手入れをしている綺麗な花壇などのある〈貫前神社前公園〉。ほっと一息つける温かい場所です。お参りを先にすべきかどうか迷いましたが、ここはひとつ、絶品食パンサンドで心も体も万全にしてからということで、お先にいただきたいと思います。
袋からサンドたちを覗くこのアングルが素晴らしくて、心がはやります。ジャム、ピーナッツ、たまご、どれから食べようか…
神社の位置する蓬ヶ丘(よもぎがおか)からの眺めとともに豊かなサンドイッチタイムになりましたので、いよいよ本殿にお参りといきましょう。
創建1500年、上毛かるたでもおなじみで、『上州一之宮』として崇敬を集めてきた神社ですので、群馬のみなさんはよくご存知かと思いますが改めて。一般的には、鳥居まで上ったら本殿はさらにその上へ、というのが神社へのお参りかと思いますが、この貫前神社は鳥居の先の楼門をくぐると本殿まで下り階段が続きます。
「日本三大下り宮」の一つでもある貫前神社は、その昔、神様が現れた場所が丘の渓間にある菖蒲谷(綾女谷とも)だったので、谷底に神様をまつる本殿が建てられ、珍しい下り参道になったのだそうです。実際に参道に立ってみると、本殿に向かってググッと強く惹きつけられる何かを感じることができます。
が、階段はとても急なのでお参りの時は足元に用心して下りてくださいね…!
絢爛なお社の意匠に細部にまで目を凝らすのもお参りの醍醐味。さらに個人的にもっと楽しみにしていたのが、境内の植物たちです。
森と共にある神社だからこその、長い年月をかけて生み出される大いなる自然の造形にうっとり。特に木の根っこと苔はずっと見ていられます。むわっと蒸した緑の空気もこの季節ならでは、思いっきり胸に吸い込みたいです。
さて、お参りのあとは上州一ノ宮駅の近くまで戻って、電車のある風景をカメラに収めたいと思います。街と線路の距離が近くて、電車と寄り添う温かい風景をそこかしこで見ることができるのも上信電鉄のいいところ。走る電車を上手く撮れるかどうか?次は上り下りどっちの電車?と時刻表を片手にドキドキソワソワする時間もまた楽しいです。
線路沿いに古墳を発見!6世紀ごろに築造された堂山稲荷古墳であると説明板がありました。全長約50メートルの前方後円墳で、墳丘の上には後の時代になってからお社もまつられ、木や花が植えられ公園化しています。
東日本随一の古墳どころである群馬。教科書に載るようなスケールの大きい「これぞ遺跡」的な古墳もかっこよくてワクワクしますが、この堂山稲荷古墳のように史跡プラス色々な意味で人々の暮らしのそばで温もりある姿を残しているものも、私たちの街にはたくさんあって大好きです。
余談ですが、日々がちいさな旅になるの『高崎商科大学前駅』のポスターを飾った大鶴巻古墳も、実はポスターとは別の角度から見ると、古墳の一部が畑になって野菜が育てられていたりと、何ともほっこりする風景を見つけることができます。古代から続く悠久の表情と今ここにある日常が共存する、つぐひ編集部おすすめ古墳もぜひ旅してみてください。
さて話を戻しまして、小高い古墳から線路を眺めるとどんな景色が撮れるでしょうか。近くの踏切の音を合図にカメラを構えます…!
手前に広がる花畑、古墳から伸びる高い木の枝、その間から線路を進む赤い電車を捉えました。奥行きのある素敵な写真ですね。時刻表によると、このあとは反対方向からまた電車が来るみたい。古墳の周りの草花を愛でながらシャッターチャンスを待ってみましょう。
来た来た!曇り空を颯爽と横切るレトロオレンジの電車に出会えました。
続いて、線路と富岡バイパスのちょうど間を通る、のどかな住宅街の小径から上州一ノ宮駅へ向かいます。
古きよき佇まいの駅舎が今も多く残る上信電鉄の各駅。ここ上州一ノ宮駅も、単に電車に乗り降りする場所にはとどまらない、カメラを向けずにはいられない魅力に溢れていました。
今度は駅にやってくる電車を待ち構えてシャッターチャンスを狙います。上信は単線路線なので上り列車と下り列車が駅のホーム前後で分岐するポイントがあります。この写真映えする位置でぜひ電車をカメラに収めたいところ。あ、上り列車がやってきました!
自動車メーカーのかわいいトラのキャラが描かれたラッピング列車が撮れました。上信電鉄は多彩なラッピング列車が運行しているのでその時々の巡り合わせも楽しいですね。さてさてお次は?
ぐんまちゃん列車がホームに到着です!
分岐ポイントを通って下仁田方面に向かうぐんまちゃん列車。思わず「いってらっしゃい」とお見送りしてしまう愛らしさでした。
さて、撮影に集中していたので(私ではなくカメラマン市根井さんがですが笑)、ちょっと休憩しましょうか。一ノ宮でのちいさな旅、ひと休みするなら、上州一ノ宮駅から北に500メートルほどにある〈茶フェ ちゃきち〉がおすすめです。
夏の深緑フォトトリップでもご紹介した、日本茶専門店・吉田園がお茶の魅力を様々な角度から伝えるお茶カフェ。抹茶の濃さを五段階とさらに上の『極』まで食べ比べできる利きジェラートが堪能できます。何と、お店は上信電鉄の線路のすぐそばに位置しているので、タイミングが合えば走る電車を眺めながらのお茶タイムも楽しめます。
さて、木の根っこ、苔、古墳とだいぶ個人の趣向が色濃かったちいさな旅でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。同じエリアでも人それぞれの”好き”をたよりに巡ってみれば、派手さはなくともじわりと心が潤う、自分だけのちいさな旅を作り出せると思います。あなたならどんな風に楽しみますか?